斉藤由貴がすばらしい。というか斉藤由貴と松本隆(と筒美京平)が。

昨日5/5(日)は武蔵新城 灯台屋さんにてイベント。→
楽しかったー。

…なぜか、
斉藤由貴の話でもりあがりました。
わたしが熱かったんだと思う…。

斉藤由貴、好きです。
もっと細かく言うと、
斉藤由貴のデビュー直後の「卒業」「初戀」「情熱」という曲が好きで、

さらには
もともと作詞家の松本隆さんが好きで、松本隆さん作詞のいろんな方の曲を集めたコンピレーション盤を4、5年前に聴いてみたら
そこで「あっ」ってなったのがこれらの曲だったんです。
だから気付いたのは全然ティーンエイジャーの時とかではなくて近年。
そしてちゃんと聴いたのほとんどこの3曲だけ。
…いやいや嘘だ。ここはきっとほんとはたくさん聴いたことあるはず。

(以降はだいたいわたしの妄想です)

「卒業式で泣かないと冷たい人と言われそう でももっと悲しい瞬間に涙はとっておきたいの」
斉藤由貴デビュー曲「卒業」です。そうその作詞は松本隆。

「卒業式は悲しむもの」
かどうかは本当はわからないし、そうじゃない子だってきっといる。
けれど、そんなことを考えるような像がアイドルの曲で取り上げられることは少なかったんじゃないかな。
女の子のアイドルの曲の歌詞に登場する像は基本曇りがなくて、恋にときめいて…そういう女の子がかわいくて。
そういうありがちを覆すような表現。
聴いた時、「発明だな」と思いました。

目の前の恋だけに生きるのではなくて
自分の心の中のモノローグ、自分だけの世界を大切に持っている女の子。
制作チーム、特に歌詞としてはそういう女の子の世界を描こうとしたんだと思うんだけど、

というより、「卒業」からはじまって、「初戀」、「情熱」と、斉藤由貴が松本隆にあれらの歌詞を書かせたんだよなと。

「卒業」は斉藤由貴のデビュー曲。
調べてみると、この曲については、作詞が先行でそのあと曲だったみたい。
確かにこの曲は歌詞が際立っていると思うんですよね。

「初戀」「情熱」もアイドルの曲で描かれがちな目の前の恋にときめく女の子像を、多分あえて外した歌詞になっていると思うんだけど、
斉藤由貴が出てきた時、松本隆はこんなこともできる、あんなこともやれるかもとすごく表現欲が掻き立てられたんじゃないかな。

ものを考えたり、内面をこまやかにひとりでみつめたり、言葉や自分の思いを大切にする、そんな雰囲気。
斉藤由貴はそういう雰囲気を携えて登場してきたアイドルだった気がする。

そう、アイドルは自分で楽曲を作るわけではなくとも、
作家たちを刺激して、それまでのスタンダードを超えるような楽曲を描かせることもあって、そういうのもアイドルのすごい才能なんだと思う。

もうひとつ、
斉藤由貴は「うまいへた」以上に、本人と曲が一体となって心から歌っていると感じさせるようなものがあるような気がするんですよね…。
そこが与えられた曲をきっちり歌うアイドルとまた違うというか…。
(松田聖子はどちらかというとこちらですよね。聖子ちゃんは聖子ちゃんですごい。ほんとプロフェッショナルというか…。リスペクトしています。)

そこが以降、斉藤由貴が歌よりも演じる方を強めていく方に至ったところなのかも。
斉藤由貴はなにやっても斉藤由貴なのに、確かに役柄と一体化しているようなタイプの役者さんだなと思います。

何年か前、松本隆作詞の曲をいろんな方が歌うというイベントがあって、
斉藤由貴はちょうどその時プライベートの問題が表沙汰になってて半ば謹慎状態だった時だったんですよね。
確か、松本隆は「それでも出ていいよ」って言ってレジェンド枠で出演。

斉藤由貴との楽曲は、ある意味松本隆の中での最高傑作だと思います。
松本隆もそれをわかっているから、斉藤由貴を外すなんてありえなかった。
松本隆は職業作家であるけれど、もともとの文学青年的な部分で斉藤由貴の存在感と合致する部分もあったんだと思う。

斉藤由貴については、
「AXIA ―かなしいことり―」という曲を、テレビで斉藤由貴を観た銀色夏生が作って持ち込んだという話もあるみたいで、
松本隆に限らず、作家の表現欲と想像力、この子にこんなことを歌ってもらいたい、を喚起する存在だったんでしょうね。

もちろん筒美京平の曲もいいんですよ。
このCDを聴いて、もうひとつ強くひっかかったのは太田裕美の「9月の雨」という曲で、こちらも筒美京平作曲。
斉藤由貴、太田裕美と、おふたりともどちらかというと内省的なムード。
松本隆がすごく活きるのって、ほんとうはこういう内省的な雰囲気かもで、
筒美京平はもっとオールマイティーなんですよね。
松本隆の歌詞のよさを最大限に引き出せる能力を持った、完全に職人。

松本隆、ラッツ&スターの「Tシャツと口紅」も好きです。
こちらの作曲は大瀧詠一。
はっぴいえんどからのおつきあい。

若い時の斉藤由貴の写真…とか考えて、ネットからとか著作権的によろしくないよなと思い至り。
こうなったらと自分でがんばって描く。むり。今のわたしではここが限界よ…。ニュアンスでくみとって…。